NHKの土曜ドラマで、前編「Noの中のYes」と後編「働く理由」が放映された。
荒川龍さんの「レンタル姉さん」(東洋経済新聞社)が原案。
主人公は、美散という、携帯電話を持てないというトラウマと父親との確執を抱えたレンタルお姉さん。
友達や仲間ではなく、あくまでも「仕事」であり、外の世界へつなぐ「道具」である、という美散の言葉。
これまで、引きこもりの人たちに関わっているのは、保健所など公機関の人たちや、ボランティアの人たちというイメージが強かったが、プロとして技を持ち、磨き、罵声を浴びせられようが理不尽な扱いを受けようが、相手を責めず、自分の感情を出さず、「道具」としてプロに徹する。
「あなたより先に両親が死ぬ。その時あなたを助ける人は誰もいない」という美散の言葉に、引きこもり少年、信吾が「友達やろ?」と問いかける。美散は「いいえ。私はあなたの友達じゃない」と言い放つ。「友達だと思ったこともない」と。
「裏切り者!」と叫ぶ信吾に続けて「友達はあなたが自分で作るものよ」と続く美散の言葉は、分かってはいるけどそれができない信吾を貫く。思わず花瓶の水を美散に浴びせる信吾。
その様子を見ていた信吾の母親は、自分たちが家を出ている決心をする。そして、信吾は自立の道へ。
引きこもりの息子を置き去りに家を出ていく選択をする両親。
そこに至る葛藤を思うと辛い。しかし、両親が出ていけたのは、息子に対する絶対的な信頼があったからで、決して捨てたのではない。
引きこもりの息子の顔色をうかがって暮らすだけの、共依存の関係の方がはるかに楽なことだってあるからだ。
自立の道を歩き始めた信吾は、美散の所属するグループの寮へ入るが、決して美散にうち解けない。むしろ、冷たくあたる。美散は自分は道具なのだからこれでいいと思うのだが、どうにもやるせない。
後編は、美散と確執のあった父親が突然亡くなる。自分にもあったことなので、美散のやるせない気持ちは痛いほど分かる。
今回は、35才で4年間ニートの男性、早川。早川は外へ出ることができるし、年齢的にも自分はニートではないと言う。とにかく理屈っぽく、美散を小馬鹿に?している雰囲気もある。
定年退職まで、デパ地下でコロッケを売り続けていた父親もバカにしている。コロッケなんかに意味があるのか、と。
早川は「働く理由」にこだわるあまりに、就職活動をしない。
「そろそろ働いてみませんか?」という美散の言葉は、まるで私自身に向けられているよう。
働く気になればいつでも働けるのだということを、美散に当てつけようと思った早川は、ハローワークで、ニートだった4年間なにをしていたのかを問いつめられ言葉につまる。そしてその夜、自殺を図る。
自信を失って仕事を辞めようとする美散を引き留めたのは、意外にも早川だった。
ラスト近く、早川と早川の父親とのシーンは涙涙…。
父親を認め「一生懸命働いてきたんやないか。家族を養うために」と告げる早川も、早川に「働くことが、生きることがどんなに素晴らしいものか教えてやれなかった」と頭を下げる父親もどちらも素晴らしい。 |
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